ゆめみどり学生指揮者論(仮)

中2~大4 学生指揮8年分の備忘録

指揮者の基礎練の話

羽生結弦選手が素晴らしい言葉を残してくださいました。

『芸術とは明らかに、正しい技術、徹底された基礎によって裏付けされた表現力が無いと、芸術として成り立たないと思っています』

もうまさにその通りでしょう。基礎に勝るものはありません。

 

 

 

で、指揮の基礎の話です。そもそも基礎技術って何だよっていう話です。

専門教育を受けてるわけでもないアマチュアである学生指揮者にとってみれば、基礎技術が何なのかを知るのでもなかなか難しいです。自分はたまたま運よく教えていただけましたが……

 

結論から言い……たいところですが、これは大きく2段階に分けてあると思っています。

 

1.指揮が振り上げの連続であることを理解する=正しい振り上げ方を理解する

2.斎藤英雄先生著「指揮法教程」第1部を覚え込む

 

この2ステップです。

 

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1.指揮が振り上げの連続であることを理解する=正しい振り上げ方を理解する

 

個人的にはこの壁を越えられるかどうかが非常に重要だと思っています。

壁を越えるというと大げさな気がしますが、結果的には1拍子の打法となるこの技術を正確に知ることができるか否かで、ここから先に進めるかどうかを決める、決定的な、まさに「基礎の基礎」がこれであるからです。

自分が学生指揮という立場だったからだとは思いますが、「正確に習得」と言い切ることはできません。なぜなら、正確に習得した方の教えを請えるとは限らないからです。
自分もちゃんとできてるかは怪しいからって部分もあります。

 

基本位置で本当に一瞬だけ力を入れて腕を跳ね上げ、そこから頂点に向かい、再び降りてくるまでは完全に脱力し、その間腕はまるで跳ね上げられたボールのように機動する……
みたいな話は、自分が書くよりももっと良いYoutube動画なんかがあるでしょうから、そちらを探していただければと思います。

 

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2.斎藤英雄先生著「指揮法教程」を覚え込む

 

【改訂新版】 指揮法教程

【改訂新版】 指揮法教程

 

斎藤英雄先生がいかに素晴らしい先生であり、この本がいかに画期的で優れたものであるかは、それに詳しいブログや記事に譲るとして、1つ目のステップを越える(理解する)と、この指揮法教程に書いてあることが理解できるようになります。

逆に1つ目のステップを越えないで指揮法教程を読んでもちんぷんかんぷんです。

ソースは過去の自分です。

 

そして、

この本に書いてあることこそが、指揮法の基礎です。

 

 第1章 第1項 第1節「1拍子の打法」を、予備知識なしで文字だけで理解しようとするのはかなり苦しいです。一方で、1個目のステップを他所で踏んでいればすんなり通り抜けられます。

そして、この節を抜けられたら、後は第1章 第3節「しゃくい」以外はほぼすべて同じ論調・解説で書かれているため、本を読みながら練習するだけでしゃくい以外の基礎技術をすべて手に入れることが可能です(書き方が大げさ過ぎるかもしれませんが……)

 

問題は「しゃくい」です。ここだけは何故かふわっと書いてあるだけで、何とも分かりにくく、自分がやっている運動が本当に正しいのかイマイチ本を読むだけではわかりません。これは、プロの指揮者に教えを請うか、もしくはYoutubeで素晴らしい指揮をしている動画を探すしかないのではないかと思っています。

 

個人的には、第2部 "応用練習篇"(譜例を用いた実戦練習)は後でもいいので、とにかく、第1部に書いてあることを毎日少しずつやって行って数か月~半年間位続けて、もう他人に説明できるくらいに体にすべてを覚え込ませればOKだと思っています。

そして、その体に覚え込ませる行為こそが指揮の基礎練です。

じみーな作業ですが、頑張りましょうとしか言いようがないです。

 

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基礎練に当たっては、ポイントが2点あると思っています。

1つ目は全く個人でやる時。2つ目は合奏の時です。

 

1.全く個人でやる時

全く個人でやる時は、可能であれば鏡と本(指揮法教程)を用意して、自分の指揮がちゃんと本通りに出来ているかどうかを鏡で見ながらやりましょう。最近だったら自撮りカメラで確認するのもいいかもしれませんが、カメラを見るために姿勢が悪くなっちゃったりしたら元も子も無いので注意です。

落ち方が不自然だったり、なんだか軌跡が変だったりというのは、すべて見づらい指揮に直結です。基礎練ですから、その辺はしっかり正しく出来るように練習しましょう。

場合によっては1拍子の振り上げまで戻ることも辞さないことです。

 

2.合奏の時

合奏の時……というと、「メンバーに振ってる姿を見てもらって、見づらいか見やすいか確認するんでしょ」みたいに思われるかもしれませんが違います。今は基礎練の話です。

合奏の時に自分の指揮の基礎練が出来ます。それは、ウォームアップ等でロングトーンをしている時です。メトロノームに合わせて合奏隊のロングトーンをやっているバンドであるならば、残念ながらこの練習をすることは難しいですが……

 

ゆっくりなテンポを正確に刻み続けるのは非常に難しい技術であると同時に、振り上げからの運動=1拍子の基礎が出来ていないと絶対に出来ない技術です。テンポがブレます。

これをしっかり振り切れるような練習を、合奏の場でできるのです。一人で孤独に練習してるよりはマシでしょう。また、合奏隊もつまらないなーとか思いながらロングトーンをぶーっとやってるかもしれません。合奏隊はロングトーンの基礎を、自分は打法の基礎をお互いに一緒に練習するのです。

 

「音が聞きたいから」とか「ロングトーンだし振っててもしょうがないから」とか言う理由で指揮を振らないのは論外です。それだったらあなたも一緒に楽器をもってロングトーンに参加する方が何百倍も有意義でしょう。
ロングトーンを振っててしょうがないことは、これまで述べてきたように全くありませんし、打法がしっかりできているなら、少し意識を打法から逸らして音を聴く方に集中することだって可能です。音が聞けないなら間違いなくあなたは指揮を振れていません。それだけの事です。

 

また、ロングトーン以外のウォームアップや基礎合奏等までも任されているならば、1拍子の基本打法以外を練習するチャンスにも恵まれていると言えるでしょう。そうです。アーティキュレーションの練習です。アーティキュレーションに合わせて、叩き方を変えるという事です。詳しい話は本を読んでください。

これも理屈はロングトーンと全く同じですので、同じことを書くことはしません。

 

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指揮だって芸術であり技術ですので、どんなに素晴らしい指揮を振っている方でも、結局は基礎に帰り着きます。どんな指揮も、盤石な基礎の下に成り立っているという事は言うまでもないことでしょう。

 

ただ、地味な練習ですので、その辺はうまいことやっていかないといけませんね。

 

ちなみに自分は、本を買ってから1か月半くらいひたすら集中特訓して、後は思い出したころにやるという方式をとってました。コツコツやるのは苦手です。

 

 

基礎練、頑張りましょう。

 

 指揮法教程、買いましょう。

【改訂新版】 指揮法教程

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ゆめみどり