左手の練習の話
指揮を振ってるとそのうち左手を使いたくなります。
というか、指揮法教程を完璧にこなしたとしても、右手の動きは完全に基礎をマスターすることが出来ますが、左手は基本位置(おへその辺り)で固定された状態になってしまいます。
指揮法教程p.210の言葉を引用すると
『左手を効果的に使う事が出来れば,右手で表わしきれない部分(特に表情等)を示すのに,非常に役立つのである。』
というわけで、右手がリズムをとっている一方で、表情付けに使うのが左手なわけですが、さてじゃあ具体的にどうやって表情つけるのか、その基礎とかはどうなってるのかという話をしたいわけですが、同じく指揮法教程p.210の言葉を引用しますと、
『然し,左手の使用については一定の法則が無く,各人各様のジェスチュアである為,ここではその使用に関して非常に述べにくい。』
とあります。
つまるところ、左手の使い方は各人各様なのです。
なお指揮法教程では、この部分の後に「一般的にやってはいけない左手の使い方」と「一般的によく使われる左手の使い方(特にダイナミクス表現)」の2点を書いてくださっていますが、それを引用してしまうわけにはいかないので、気になった方はぜひ買ってください。
さて各人各様であるならばどうするか、という事で私がたどり着いた結論は2つです。
1.一般的方法は技術として覚える
2.それ以外は曲の振付にしてしまう
それぞれ見て行きましょう。
まず“一般的方法”とは、ダイナミクスとタイミング指示です。この二つは簡単な曲から難しい曲まで必ず含まれる要素であることは言うまでもないでしょう。
この指示方法は基礎技術としていつでも使えるようにしておく必要があります。
次に“それ以外”についてですが、これが表情付けに当たる左手の使用です。これは曲ごとに全く異なるものですから、「こういう表情で演奏してもらいたい!」というのを体で表現できるように左手に振付をします。もはやダンスです。
話が少し脱線しますが、吹奏楽ポップスのようにドラムにテンポ感をすべて持っていかれてしまうような曲では、指揮の最終形態はオタ芸に帰着するというのが持論です。
曲/テンションの盛り上がりとかをリズムに合わせて体で表現してかつリズム指示もやっていると、結局あんな感じになるというやつです。
……そんな感じで、とにかく振付を考えます。
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ふわっとした話はここまでにして、では練習方法について述べましょう。
まず大前提条件として、右手の1~4拍子の正しい運動を無意識に出せる状態まで持っていけていることが必要になります。
でないと、右手と左手で別々の事をするのに頭が付いていけず大変なことになります。
Core2Duo以上の脳CPUをお持ちの方は大丈夫だと思います。
そもそもですが、
『指揮者が合奏・合唱を指揮するに当たって最も重要な事であるRhythmを示すのは主に右手の役目であり,又,右手はその他に音楽の表情をも表現することができる』
指揮法教程p.210より抜粋
ので、無理に左手を使おうとする必要なんてさっぱりないです。焦らず、順番に、いうなればゲームのアンロック方式みたいな感じでやっていくのが、恐らく一番楽しいと思います。いきなり何でもかんでもやろうとしても、多分大変なだけで何も面白くないと思うので……
右手だけの指揮に飽きたな~ってなったら進んでみましょう。真面目に指揮法教程やってたら多分3か月~半年くらいで行けるんじゃないでしょうか。
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さて“一般的方法”の練習方法は、「左手は直線、右手は三角形を描くアレ」をやります。言葉で伝えにくいんですが、頭の体操とかでやるアレです。左手は実質二拍子で、↓↑↓↑……という運動をしている一方で、右手は↙→↖↙→↖……と同じテンポで繰り返すアレです。これを、メトロノーム使ってやりましょう。大体♩=160くらいまでで出来るようになれば、とりあえず指揮中に自然に(無意識に)左手指示が出せるようになるでしょう。
正直、これには根拠はなくて、個人的体験がソースです。
練習法はともかく、どうやって指示出せばいいの!?という話ですが、3つあると思っています。
1つ目は指揮法教程に書いてあるものを読みましょう。2つ目は目の前の指揮者の方法を真似します。3つ目はコンサートもしくは動画で、プロの指揮者の左手を凝視します。
ですが、一般的方法と言えども結局のところ左手の使い方は振付なので、
①指揮法教程で何が一般的方法なのかを言葉で知る
②手を動かしている人を見る
③真似してみる
の3ステップ、ダンスを習得するのと同じ要領で練習するしかないのではないかと思います。他に良い方法があったら教えてください。
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次に“それ以外”……もとい、曲の表情付けで左手を使う場合の練習方法についてです。
これはとても良い個人練方法があります。
音源に合わせて左手だけで指揮をしましょう
これだけです。音源は、右手でリズムを刻む必要もなく勝手に流れてくれます。ですので右手を放棄して左手で表情付け放題です。しかも(個人練なので)どんなに見にくい指揮でも文句は言われません。最高ですね。思う存分、左手で表情付けてやりましょう。
・・・で、終わってしまうならただの自己満です。思う存分左手で表情付けを行ったら、次はそこから抽出(そぎ落とし)作業に入ります。実際に使えそうな部分だけを取り出して、振付として指揮に組み込むのです。
この段階から、右手と左手を同時に使う、普通の指揮に戻ります。正確には、右手はすでに振れていることがそもそもの前提ですので、右手の指揮に左手を足す、というべきかもしれません。
さてここで、何が実際に使えるのかという話になりますが、これはケースバイケースかつ経験と勘によるものが大きいと私は思います。そもそも振付ですし、コレ!っていう正解が無い事が原因でしょう。
ただ一般的にそぎ落とす部分としての候補は
1.左手が動きすぎて右手が全く動かせないような振付
2.左手があまりにもリズムを乱しているような振付
3.鏡で見たら正直何をやってるのか意味不明な振付
4.自分の体力的にヤバイ振付
の4点は積極的にそぎ落としていいのではないかと思います。
そして、その完成した振付を練習場(合奏)に持って行って、やってみます。
が、いきなり全部を披露すると訳が分からない指揮になったり、そもそもそんな事やっている場合ではなく、もっと根本的に合奏隊が練習しなきゃいけない箇所があったりするでしょう。
ですので、自分が自信を持って出せる、完成したと言い張れる振付から順番に披露していくのが個人的なオススメです。いきなりあれもこれもやるのは、自分の頭をこんがらがらせるという意味でもあまり良くないという経験にも基づいています。
そして、合奏隊が、自分の振付で思った通りに動いてくれたかを良く確認しましょう。思った通りになってくれれば振付は有効に働いていますし、思った通りでないならばその振付は失敗・ダメですので、持ち帰って改善案を考えましょう。
この、振付の「作成⇒披露⇒改善⇒披露」のループを繰り返して、本番の左手指揮を完成させていくのです。
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何度でも書きたいことなのですが、
特に左手指揮はダンスです。
(一般的方法以外は)振付るものです。
練習しなきゃ出来るようになりません。
しっかり、舐めないで練習しましょう。ほんとに。
仕込み無しでいきなりスゴイ左手指揮が出来るならば、あなたには指揮の才能があるので是非プロを目指すべきです。
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さて左手表情付けのネタ探しですが、これこそプロの指揮者の表情付けをパクりまくる以外に方法はありません。実際のコンサート、TVのコンサート、コンクールで見かける他所の学校の指揮者の先生等々、あらゆるところから盗みまくりましょう。
実際のコンサートは曲を楽しみたい部分もあるでしょうからあんまり指揮法を凝視するのもアレですが、TVのコンサートやコンクールの他校演奏で見かけた指揮なんかは、その場で(ホール客席ではもちろん手元でちっちゃく)振り方を真似してみるのはとても効果があると思います。
最近では、音楽大学や自衛隊の演奏が公式でYoutubeにアップされていたりするので、簡単にプロに教わったりできない我々学生指揮にとって、勉強にとてもありがたい時代になりました。
ぜひ、いっぱいネタを習得させていただきましょう。
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左手指揮は振付です。
まずは振付て、そして練習しなきゃ出来るようにはなりません。
練習しましょう。
指揮を振っていてたどり着いた結論の一つです。
ゆめみどり